春寒

春寒や自分のための厨ごと    稲畑汀子

4月だというのに真冬並みの寒さにびっくり。地元の群馬では、雪が積もったと聞いた。

厨、つまり台所というのは家の中でもとかく寒い場所だと思う。そんな厨が「自分のため」であることは、厨しか居場所がない、厨にいなければならない妻あるいは母という役割に縛られている、そんな叫びが聞こえてきそうな一句だ。「すでに春になった気分が強い」ところにくる寒さである春寒の季語がよく効いている。